(1)社会不安障害(SAD)克服のための基礎知識:SAD(社会不安障害)治療体験記

あがり症との違い

社会不安障害(SAD)の患者ではなくても「あがる」ということは誰しもが必ず経験します。これは「人間である」以上、当然のことです。

では「あがる」と人間はどうなってしまうのでしょうか?下記に「あがった」時の代表的な症状を並べてみます。


・脈が速くなり、動悸がする

・冷や汗などの発汗がみられる

・手足や全身の震えが起きる

・顔が赤くなる


どうでしょうか?
あなたはこれらと全く同じ症状をもつ病気をどこかで目にしたことはないでしょうか?

そうなんです。社会不安障害(SAD)とは?にある、社会不安障害の患者のもつ症状と全く同じなのです。

それではなぜ全く同じ症状をもつのにも関わらず「あがり症」が性格の問題とされ、「社会不安障害」は病気とされるのでしょうか?そして、「あがり症」と「社会不安障害」の違いや判断する境界線はどこにあるのでしょうか?


「あがり症」は性格で「社会不安障害」は病気



「あがり症」は性格で「社会不安障害」は病気とされるのは、簡単に言ってしまえば上記のような症状があらわれる場面を回避してしまうかどうかです。

例えば、あがり症の人は「大勢の人の前でのスピーチ」を頼まれたときにためらいを感じつつも引き受けることができます。対して、社会不安障害の患者は何とかして断ろうと考えてしまいます。

ここが「あがり症」と「社会不安障害」の決定的な違いです。

言うまでもなく、「あがってしまう場面」を回避することは社会生活に少なからず支障をきたすため、社会不安障害は「病気」とされ、適切な治療が必要と言われているのです。


「あがり症」と「社会不安障害」の違い



あがり症と社会不安障害の境界線については研究が進められ、ある程度の傾向がわかっています。ここでは簡単に下記の表にまとめます。

なお、ここでの事例は「人前でスピーチをする時」とします。


あがり症=スピーチをする直前に不安を感じる
社会不安障害=スピーチをすることが決まった時から常に不安を感じる

あがり症=スピーチが始まると、不安がだんだんとおさまってくる
社会不安障害=話し始めてからも不安はおさまらず、むしろ不安が強くなることもある

あがり症=不安があっても、とりあえずスピーチを続けることはできる
社会不安障害=不安感からパニックになってしまい、スピーチを続けられなくなってしまう

あがり症=スピーチが終わると気持ちが楽になる
社会不安障害=何とかスピーチが終わってからも恥ずかしさを感じる

あがり症=スピーチの後は通常の精神状態に戻る
社会不安障害=スピーチの後に強い疲労感をおぼえる

あがり症=スピーチの場数を踏むことでだんだんと慣れてくる
社会不安障害=何度やっても慣れることはなく、むしろ不安が強くなってくる



どうでしょうか?発汗や震えなどの症状は同じでも決定的に違うところがあることがよくわかると思います。

これが「あがり症」と「社会不安障害」の違いです。


「あがり症」と「社会不安障害」の境界線



「あがり症」と「社会不安障害」をはっきりと線引きすることはできません。

いきなり結論から書いてしまいましたが、実際にこれほど社会不安障害の研究が進んでいてもその境界線はわからないのです。これはどんな名医や研究者でも同じ結論を言います。

例えば、『骨折』であればレントゲンをとれば100人中100人の医師が「骨折である」と診断するでしょう。しかし、『精神的な病』は明確な基準が無いためにその判断が難しいのです。

しかしながら、専門家ではなくても「社会不安障害」として治療を受けるか、「性格の問題」としてしまうのか判断できる人はいます。

それは実際に治療を受ける私たちです。

もしあなたが日常生活の中で「不安」や「緊張」を強く感じ、それが生活に支障が出ていると感じるならば、それは社会不安障害であり、治療を受けるべきです。

科学的な結論ではなく、主観的な結論に達してしまいましたが、「あがり症」と「社会不安障害」に境界線をひけるのは治療を受けるあなた自身です。

もし、日常生活に支障がでる「不安」や「緊張」を感じているのであれば、迷わず医師による診察を受けてみましょう。

治療費用はどのくらい?

私の場合は初診料は保険3割負担で「2760円」でした。
同じく初診の際に薬局で1週間分の薬をいただいたときは「510円」でした。

治療が安定しだしてからは1ヵ月ごとの診察になりましたが、診察時に1690円薬の代金に2140円がかかっています。

診察時の詳細は以下の通りです。


・初・再診料=71点

・投薬=133点

・精神科専門療法360点


計564点=1690円(3割負担)が診察時の費用となっています。

同じく、薬の代金は以下の通りです。


・調剤技術料=192点

・薬学管理料=45点

・薬剤料=476点


計713点=2140円(3割負担)が薬をいただく際の費用になっています。

ただし、これは私のケースなので、服用する薬や治療期間、治療の種類は患者の状態に合わせて違ってくるために、費用もそれぞれ異なると思います。

上記の金額は一例だと思ってください。

医療費控除ができる場合も



社会不安障害での治療に限ったことではありませんが、1年間で10万円以上の医療費用がかかった場合は税務署に申告すると、所得税などの税金の一部が還付されます。

医療機関からもらった領収書は必ず保管し、1年間の合計金額が10万円を超えるようでしたらお住まいの地域の税務署に相談してみましょう。税務署員さんも親切に対応してくれると思います。

※なお、医療費には服用する薬の費用も含まれるので、薬局からもらった領収書も保管しておきましょう。

治療期間は患者次第

社会不安障害(SAD)の治療を行うにあたって、投薬治療はどの医院でも行います。患者の緊張感や不安感をやわらげるために薬の力は必須といってもよいですが、この投薬期間半年~数年ほどになることが多いです。

薬によって症状を緩和し、今まで避けてきた状況にも自然と(時には勇気をもって)対応できるようになります。その過程で今までの自分と違った新たな行動パターンが確立されてゆき、薬の力に頼らずとも行動ができるようになれば社会不安障害を克服したと言えるでしょう。

全般性と非全般性の違いにもあるように、基本的に治療の期間は非全般性の人ほど早く治り、全般性の人ほど時間がかかる場合が多いです。


社会不安障害には「一瞬で治る薬や方法」というものは存在しません。しかしながら、同時に個人差はあるものの、時間さえかければ必ず治る病でもあります。

ある程度の期間をかけて徐々に治してゆきましょう。

※なお、薬の効果は最初に服用した次の日にすでに感じる人もいれば、1ヶ月くらいの時間が必要な人もいます。また、薬の種類も個々人の症例によってかなり違ってきます。

いずれにしても根気がいります。
必ず治ることを信じてがんばりましょう!

全般性と非全般性の違い

社会不安障害(SAD)には大きく分けて2つのタイプが存在します。それは全般性非全般性として区別されています。

ここではそれぞれのタイプについて解説してゆきます。

非全般性のタイプ



まずは「非全般性」のタイプです。
非全般性のタイプはある特定の状況にのみ強い不安を抱くタイプです。

例えば、人前で電話にでるのは問題なく対応できるのに、職場での会議や知人の結婚式のスピーチでは非常に緊張してしまうという人は非全般性のタイプと言えるでしょう。このタイプの人は40代まで社会生活を問題なく過ごしてきたのに、ふとしたことがきっかけで突然社会不安障害を発症してしまうというケースが多くなっています。

この非全般性のタイプの患者は比較的治療が容易で、場合によっては数ヶ月で克服できる人もいます。

全般性のタイプ



次に「全般性」のタイプです。
全般型のタイプはチェックシートで診断!にある状況に対してほとんどの項目で苦手意識をもっている人です。

このタイプの人は社会生活を送ること自体に大きな障害が起こり、精神的な苦痛を感じるのもより大きいケースが多いです。発症するのは比較的若い年代の人が多くなっており、放置しておくと人前に出るのがますます困難になってゆきます

ゆえに、全般性の人こそ迷わずに治療を受けましょう。

いずれのタイプの場合も必ず治療で治すことが可能ですし、例え非全般性のタイプでも社会的な不利益をこうむることはほぼ避けられないので、早期に治療することが大切です。

関連しやすい病気

社会不安障害(SAD)は他の精神的な病を併発しやすい病気です。

もしあなたが「自分は社会不安障害かも?」と感じたら、早めに医師の診察を受けてください

社会不安障害の患者は人前に出るような状況を避けようとする傾向があるために、それを放置しておくと「ますます人前に出たくなくなる」という悪循環に陥ってしまいます。

すると今度はうつ病や「パニック障害などの病気を呼び起こしてしまう可能性もあります。

なぜなら、実は「うつ病」も「パニック障害」も社会不安障害と病気のメカニズムはほとんど同じなのです(ただ、社会不安障害の場合は社会生活を何とか送ることは可能ですが、うつ病やパニック障害は日常生活を送ること自体が困難になるという差があります)。

社会不安障害は放置していても治る病気ではありませんし、放っておくとますます人との関わりがうすくなり、社会生活が困難になってしまいます。

必ず治療は早めに行いましょう。


うつ病-関連しやすい病①



「うつ病」社会不安障害と最も併発しやすい病です。

数値は調査によって多少違いがありますが、おおむね社会不安障害の患者の30%ほどが生涯のうちに「うつ病」を併発します。

いずれの場合もまず社会不安障害にかかり、人付き合いや仕事が上手くゆかなくなってうつ病を併発するというパターンが多くなっています。

うつ病にかかると、以下のような症状があらわれます。


・不眠

・無気力になる

・食欲の減退

・気分の落ち込み



などが主な症状です。

うつ病に関しては社会的な認知度も高まってきたため、ご存知の方も多いかと思いますが、うつ病にかかってしまうと社会生活をおくること自体が困難になってしまうために、うつ病になってしまう前に社会不安障害の治療を行いましょう。


パニック障害-関連しやすい病②



社会不安障害からパニック障害を併発するケースは、ちょっとした出来事がきっかけになります。

例えば、人から「顔が赤くなっているよ」と指摘された瞬間に体全体が震えてしまい、汗がにじみ、脈が速くなってしまったというケースがあります。

一度その状態を経験してしまうと、今度は突然パニック障害が襲ってくるようになります。

具体的には以下の症状があらわれます。


・動悸、心拍数の増加

・発汗

・体や手足の震え

・呼吸が速くなる、息苦しさ


などが主な症状です。

一度パニック障害を経験すると、何も無い状態から突然症状があらわれてしまうこともあるために、生活に支障が出てしまいます。

このパニック障害も社会不安障害の患者は通常の人と比べて2倍程度の確率で発症してしまいます。

なりやすい性格

社会不安障害(SAD)にかかる人には、なりやすい「性格傾向」があります。

最も多いのは真面目で几帳面な性格の人です。これはうつ病患者とも共通する部分があります。

ただし、これは「なりやすい傾向がある」というだけにすぎず、積極的で活発、なおかつ社会的に精力的に活躍している人が社会不安障害を発症することもあります。

次にイライラや焦燥感が強い人が発症するケースが多くなっています。「真面目で几帳面な性格の人」とは正反対の性格にみえるかもしれませんが、これには理由があります。

というのも、社会不安障害を発症する人は根本的な部分で自信のなさが見られることが多いのです。

その「自身のなさ」が内面に向かうと「不安や緊張、恐怖」となり、
外側に向かうと「イライラや焦燥感」から人にあたってしまうのです。

また、性格とは若干違いますが「物事を『100』か『0』かで考える人」も社会不安障害を発症しやすいことが多いと言われています。


社会不安障害なのか性格なのかの境界線



「ただの恥ずかしがりやだと思っていた」人が実は社会不安障害の患者であったという例は非常に多くあります。しかし、反対に「社会不安障害だと思ったら、単に性格の問題だった」という例も少数ですがあります

実際のところ境界線はあいまいで、専門家でもその線引きをするのが難しいのも事実です。

チェックシートで診断!のページでは社会不安障害かどうかが診断できますが、点数が社会不安障害かどうかの境目あたりであった場合は判断に迷うところです。

しかし、このサイトをご覧になっているあなたが「人前が怖い」と悩んでいるのも事実です。

判断に迷った場合は専門の医師の方に相談だけでもしてみてはいかがでしょうか?

もし社会不安障害であると判断されればそのまま治療を受け、社会不安障害でなければ継続的な治療を受けずに、「緊張する前に飲む頓服用の薬をもらうだけ」といった対処ですむかもしれません。

「迷ったら専門家に相談しよう」と思うのが大事です。

医師との相性の重要性

社会不安障害(SAD)を治療する際、患者と医師の相性も非常に重要です。

例えば、骨折だったら患者と医師の性格が合わなくても治療にあまり支障はでないでしょう。

しかし、社会不安障害のような「精神的な病」を治療する際は、医師との相性が治療効果を大きく左右します。ゆえに医師との相性は非常に重要だと言えます。

とは言っても、その判断をするのはそんなに難しいことではありません。

一般的に、高圧的かつ一方的に話をするような医師は社会不安障害の患者とは相性が悪く、反対に患者の話をじっくりと聞いてくれ、受け入れてくれる医師とは相性が良いです。

また、薬の効果や副作用について丁寧に説明してくれる医師も信頼がおけるでしょう。

もし、どうしても相性が悪いと感じたり、薬の副作用を訴えても治療方針を変えてくれないような医師だと感じたら、無理に受診を続けずに治療する医院を変えることも検討してみましょう。

医師との信頼関係はとても大事です。初診の時に「この人とは相性が良くないな」と感じたら、あせらずにその医院で治療を続けるかどうかじっくりと考えてみましょう。


医師との対話の重要性



もしあなたが「この医院で社会不安障害の治療を続けよう」と決めたのであれば、医師との対話を大切にしてください。

医師の方もプロですから、社会不安障害の症状がどんなものか十分に知っていますし、薬の効果があらわれにくかったり、副作用が強く出る場合などはそのことを伝えると臨機応変に治療方針を変えてくれます。

恥ずかしがらずに、今回は「こういうことがありました」ということを率直に話しましょう。事前に伝えたいことを紙に書いておいて、診察時にそれを見ながら話すのも良いと思います。

私の場合は診察時に予め伝えたいことを考えておいてから診察に臨みます。伝えたいことが多いときは必ず紙に書きまとめておいて、それをみながら話すようにしています。

「社会不安障害は医師と二人三脚で治療を進めるものである」という言葉を忘れないでください。

チェックシートで診断!

あなたが社会不安障害(SAD)であるかどうかチェックシートで大まかな診断ができます。紙と鉛筆をご用意いただいてからご覧ください。


▼~社会不安障害診断表~▼


下に24個の質問が書かれた表があります。
その問に「恐怖感/不安感」がどの程度あるのか点数をつけていただきます。

点数は

0:まったく感じない
1:少しは感じる
2:はっきりと感じる
3:非常に強く感じる

の4段階で記入していってください。

1.人前で電話をかける
2.少人数のグループ活動に参加する
3.公共の場所で食事をする
4.人と一緒に公共の場所でお酒(飲み物)を飲む
5.権威のある人と話をする
6.観衆の前で何か行為をしたり話をする
7.パーティに行く
8.人に姿を見られながら仕事や勉強をする
9.人に見られながら字を書く
10.あまり良く知らない人達と話し合う
11.あまり良く知らない人に電話をする
12.まったく初対面の人と会う
13.公衆トイレで用を足す
14.他の人達が着席して待っている部屋に入っていく
15.人々の注目を浴びる
16.会議で意見を言う
17.試験を受ける
18.あまり良く知らない人に不賛成であると言う
19.あまり良く知らない人と目を合わせる
20.仲間の前で報告をする
21.誰かを誘おうとする
22.店の品物を返品する
23.パーティを主催する
24.強引なセールマンの誘いに抵抗する

以上になります。
24個での合計点を出してそれをメモしてから、もう一度最初から、今度は違う基準で点をつけていただきます。

24個の質問(状況)に

0:まったく回避しない
1:回避する(1/3以下の確率)
2:回避する(1/2程度の確率)
3:回避する(2/3以上の確率。もしくはほぼ100%)

の基準でどのくらいその状況を回避するのかを計算してみてください。

それでは診断表の最初に戻り、2回合わせた合計点を計算してみてください。

▼~社会不安障害診断表~(終)▼

合計点はどのくらいになったでしょうか?
全て「3」になった場合は「(24×3)×2=144点」となります(これが満点になります)。

社会不安障害の患者はこの合計が50点以上になることが多く、100点くらいにまで達すると社会的な活動が極めて困難になってしまいます。

50点以上になってしまった人は社会不安障害の可能性が高いので、なるべく早期に医師の診察を受けることをおすすめします。

※なお、この診断表は「笠原敏彦『対人恐怖と社会不安障害』・ISBN-4772408630 65ページ」より抜粋致しました。

治療法の種類

社会不安障害(SAD)科学的な治療法が確立されています。きちんと段階をふんでゆけば必ず治る病気です。

治療法の基本としては投薬治療認知行動療法の2つがあります。

どちらか1つではなく、できれば2つとも併用してゆくことが望ましいと言われています。


投薬治療



投薬治療は抗不安薬や過度の緊張をやわらげる薬、SSRIと呼ばれる長期的に不安をとりのぞく薬などを飲み薬として服用してゆき、徐々に過度な不安感や緊張感をやわらげてゆく治療法です。

社会不安障害の治療としてはの基本はこの投薬治療が中心となります。

ただし、単純に薬だけを飲んでいれば社会不安障害が治るというわけではありません

薬はあくまで一時的に不安や緊張を和らげるだけなので、その状態で徐々に社会生活に慣れてゆくのが目的なのです。

また、この投薬治療には薬の副作用もあらわれます

例えば、「昼間の眠気」や「口内の渇き」といったものです。

治療に当たっては医師とよく相談し、副作用のことも考えながら臨みましょう。

なお、薬を飲み始めたからといって途中で止められなくなるという依存性はありません

例えば、高血圧の薬などは一度飲み始めると途中で止めることは難しいですが、社会不安障害の場合は医師が「完治した」と診断すればその後は薬を飲む必要はありません。

この点について誤解をしていて「薬の服用」に抵抗を感じる人もいますが、依存性などはありませんのでご安心下さい。

ただし、治療の途中で医師の許可無く勝手に薬の服用を止めるのは大変危険ですので、医師の指導は絶対に守ってください。


認知行動療法



認知行動療法はいままで避けてきてしまった状況、例えば「人前でのスピーチや発表」などに医師の指導の下でトレーニングとして臨み、徐々にそうした状況に慣れてゆくことを目指します。

認知行動療法は現在のところ国内では十分な経験を積んだ医師が不足しているために行える医院は限られています。

そのため、現在の日本では薬を飲んで日常生活の不安を徐々に和らげてゆき、その中で患者がどうしても人前でのスピーチなどを避けられなくなった時に限って通常とは違うタイプの抗不安薬などを飲むという投薬治療が中心となっています。

認知行動療法の利点は副作用が全く無いことで、さらに「医師の指導の下で行える」という安心感もあるために、できれば認知行動療法も行える医院で治療を行うことが望ましいでしょう。

原因は科学的

社会不安障害(SAD)にははっきりとした科学的な原因があります。「性格の問題」ではありません


社会不安障害(SAD)のメカニズム



脳内の神経伝達物質であるドーパミンセロトニンという2つの物質が減少することにより社会不安障害が発症します。

この神経伝達物質が減少することによって脳幹からの指令が正しく調節できなくなり、脳の外側にある「大脳新皮質」が過度に興奮してしまい、普通の人よりも緊張感や不安感が強くなってしまうのです。

こうした問題はどうして起こってしまうのでしょうか?

それには3つの原因が提唱されています。


心理的な原因



社会不安障害の患者は常に「自分の能力を低く見られているのではないか」といった恐れや、「相手に不快な思いをさせているのではないか」という不安を抱いています。

この状況が続くと、自律神経系のうちの交感神経が優位になり、人前では常に緊張した状態になってしまいます。

そうすると『自分が緊張しているのが周りの人にばれるのではないか』と恐れ、その心理によってさらに緊張が高まり、ますます社会不安障害の症状があらわれやすくなってしまいます。

つまり悪循環となってしまうのです。

そして、実際に人前で緊張して失敗すると自分自身の能力を低く見てしまい、人前でますます緊張してしまうという、まさに負のスパイラルにおちいってしまいます。

これは社会不安障害の患者の性格に由来します。

社会不安障害の患者は対人関係に敏感で劣等感をもちやすく自分の容姿や能力に自信が無い人が多いのです。これが「自分の能力を低く見られているのではないか」といった恐れや、「相手に不快な思いをさせているのではないか」という不安を抱く原因となっているのです。

こうした心理的な原因が第一に挙げられます。


遺伝的原因



社会不安障害の患者の近親者(親、きょうだい等)も社会不安障害を患っている確率が高くなっています。ただし、わかっているのはそこまでで、両親やきょうだいが社会不安障害の患者ではなくても発症してしまう人がいるため、今後の研究が待たれます。


環境的原因



社会不安障害の患者の親はあまり社交的ではないタイプの人が多く、引っ込み思案な親の姿をみてそれを子どもが学習してしまうケースがあります。

また、過保護に育てられたり、反対に厳しく育てられすぎた場合にも「ストレスをうまく処理する」ことを学ぶ機会が少ないために社会不安障害にかかってしまう場合が多くあります。

また、「とても恥ずかしい思いをした」という、過去の経験が発症の引き金になる例もあります。


このように社会不安障害の発症となる原因はいくつかのものが合わさっており、はっきりとは特定できません。また、たとえ原因を特定できたとしても社会不安障害が治るわけではなく、医師の適切な治療が必要となります。

症状は様々

社会不安障害(SAD)患者には共通する症状があります。程度の差こそあれ、下記の症状に思い当たることが多い人は社会不安障害をわずらっているかもしれません。

具体的に社会不安障害の患者は以下のような症状をもっています。

◇人前で話そうとすると極度に緊張してしまう
◇他の人の前で電話にでるのが怖い
◇人前で字を書くと手が震えてしまう
◇あまり親しくない人といっしょだと食事がのどを通らない
◇社会的な目上の人の前では緊張してしまいうまく話せない
◇他人と1対1になるのが怖い
◇顔見知り程度の人の集まりが嫌
◇他人の視線が怖い
◇「自分の視線が人に不快感を与えているのでは?」と感じてしまう
◇自宅以外の場所では常に緊張している
◇他人のちょっとした反応に敏感
◇どこにいても孤立してしまう(大勢の人が集まる場合でも)
◇他人とどうやってコミュニケーションをとればいいのかわからない

もしこの中に当てはまる状況がいくつかあるならば、あなたは社会不安障害である可能性があります。

症状が出やすい時



上記のような症状は社会不安障害の患者の特徴ですが、それは次のような状況のときに起こりやすくなっています。

①中規模~大勢の人前で話す

これは最も思い当たる人がいるとおもいます。結婚式、職場での会議、何らかの集会で自己紹介をしたり発表をする、多くの人の前で電話をするなどです。

これは予め発表や発言の予定がわかっている場合にはそのことを考えるだけで上記のような症状がでることもあります。

②人前で飲食をしたり給仕をする

社会不安障害の患者は人前で食事をするだけでも症状があらわれることがあります。

具体的には箸やスプーンが震えたり、人前でお茶を入れるときに手が震えるといったことです。

③人が見つめる前で字を書く

結婚式や葬儀での記帳や、携帯電話の契約書を書くとき、銀行や役所で書類を書くときです。こういった状況で手が震えてしまうことが多くあります。

④人の注目を浴びる

例えば、すでに会議や集会が始まっている部屋に入るとき、電車やバスに乗るときなどにも症状があらわれることがあります。実際に注目を浴びるのは一瞬のことなのですが、その一瞬に対して大きな不安を感じてしまいます。

⑤あまり知らない人との面談や交渉

初対面の人と会うときや、社会的地位の高い人と会うとき、商店やレストランで店員にクレームをつけたり、品物を返品するときなどです。このようなときにも不安を感じることがあります。


こういった状況で症状が起きることが多くなっています。

症状の特徴



社会不安障害の症状についてはおわかりいただけたと思います。最後に社会不安障害の症状の特徴をお話します。

①「少し面識がある」人が非常に苦手

「初対面の人と会う」ときに症状を感じやすいのはすでに述べましたが、その人と会うのが一度だけだとわかっている時には意外と社会不安障害の症状がでないのです。また、何度も会っている仲の良い友人に会うときは症状はあらわれません。

一番症状があらわれやすいのは、「少し面識があり、その後もつきあいが続く人」に対してです。

②「中程度の人数」の前が一番苦痛

何百人規模の大人数の前や、2~3人の人の前でも症状はあらわれますが、特に数人~十数人くらいの人前で症状があらわれやすくなっています。

③人そのものが嫌いなのではなく、「対人関係」に恐怖を感じる

社会不安障害の患者は「人」が嫌いなのではありません。また、「人」が怖いのではありません。「相手にどう思われているか」「人前で恥をかくのではないか」ということに対して過度に恐れを抱くのです。

「人」そのものとはむしろ楽しく付き合っていきたいと思っているのです。

④自分の感じている不安や緊張が不合理だと理解している

社会不安障害の患者は人前で過度に不安を抱いたり緊張したりします。しかし、患者自身はその「不安」や「緊張」が不合理なものであると自覚しているのです。


以上が社会不安障害の患者の特徴です。

社会不安障害(SAD)とは?

社会不安障害(SAD)とは「social anxiety disorder」の略語で、「人前で何かをする」という状況に「強い不安を感じてしまう」症状のことをさします。

患者の特徴としては「他人の注目にさらされるような状況に対する恐れ」、または「自分が恥をかいてしまう行為をしてしまうのではないかと思う恐れ」をもっている点とされています。

そうした恐れを感じる場面は患者によって様々ですが、そうした場面に遭遇した場合は下記のような症状があらわれます。


・脈が速くなり、動悸がする

・冷や汗などの発汗がみられる

・手足や全身の震えが起きる

・顔が赤くなる


もちろん大勢の人の前でのスピーチをしなければいけないときなどは誰でも緊張してしまうものですが、社会不安障害の患者はそうした状況に「極めて強い不安感」を感じそうした状況を避けてしまう傾向があります(どうしても避けられない場合は強い不安と苦痛を感じてしまいます)。

もしあなたが「注目を浴びる」ということに対して日常的に強い不安を抱くことがあるならば社会不安障害の患者である可能性があります。

意外に多い患者数



まだまだ一般的に広く知られていない社会不安障害ですが、その患者数日本だけで300万人以上いるといわれています。決してまれな症状ではありません

「自分だけが異常」なのではなく、多くの人が似たような悩みをかかえているのです。

社会不安障害が発症する年齢の平均は22歳くらいと言われています。早い人は10代中盤から20才くらいまでの間に発症しますが、40歳前後で発症する例も多くあります。

そして「社会不安障害は放っておけば治る」病気ではありません。むしろ放置しておくと苦手な状況を避け続けることになり、うつ病などの症状を併発してしまうこともあります。

もし「自分が社会不安障害かも」と思うのであれば早めに医師の診察を受けてみましょう

放っておくと大変なことに



改めて繰り返しますが、社会不安障害は放っておいて自然に治るものではありません

放置しておくと人前に出る状況をますます避けるようになり、社会との関わりがうすくなってゆき、結果として他人とどう接してよいのかわからなくなるという悪循環に陥ってしまいます(結果的に「ニート」や「ひきこもり」を生み出す要因になっているという指摘もあります)。

「自分は社会不安障害かも」と思ったら医師の診察は必ず早めに受けてください。緊張をやわらげる薬を服用するだけでも他人と接するのがずいぶんと楽になります。

早期の治療があなたを救います。

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